「石橋を叩いて渡る」という言葉がありますが、皆さんは石橋を渡るとき、叩く、叩かない、壊す…どんなタイプですか?

私は、叩いて壊して、最も頑丈な橋の作り方を調べて学び、自分で作って渡るタイプ(笑)。昔から、物事の存在意義や効果、仕組みがどうなっているのか、自分で納得できる答えを得ないと気が済まない性格なのです。

そんな性分に加えて、「自分で何かを生み出したい」「人と違うことをやりたい」という思いも強く、高校生の頃には、すでに起業家を志すようになっていました。一方で、当時の私にはもうひとつ夢がありました。テレビ番組の制作者です。特に、報道番組に興味を持っていて、今では一般的になっている、エンターテインメント性を取り入れた面白いニュース番組を作りたいと考えていました。報道に無関心な若者の「ニュースは面白くないもの」という概念を、自分の力で覆してみたかったのです。

大学進学の際は、どちらの世界に進もうかと悩みましたが、大学で経営や経済を学んだからといって経営者になれるというわけでもないので、ひとまずテレビの世界を目指そうと、映像系の学部に進みました。

ところが入学後、テレビ局のインターンに行ったときのこと。実際にさまざまな現場を体験させてもらうことで、皮肉にもテレビ業界は年功序列の傾向が強く、実力よりも社内政治力の方が重視されがちだということを知りました。その瞬間、「もう、この世界は無いな」と思ったのです。

私は、何事も徹底的に追求しないと気が済まない性分なので、年を取って思うように動けなくなってから成功しても遅いと考えていました。となると、勤続年数がものをいうところでは志を実現できません。そこで改めて、経営者の道を目指すことを決意。早速、起業家向けのセミナーなどに足を運び、起業して成功するには「営業力」が重要だと学びました。そして、営業力を身に付けられる会社という基準で就活を仕切り直し、内定をいただいた企業の中で最も役職者の平均年齢が若く、革新的な社風を持っていたリクルートに入社。3ヵ月でトップセールスを達成し、退職するまでその座を維持しました。

何をしたと思いますか?

端的に言うと、営業成績が極めて良い上司や先輩の技を盗んだのです。お客さまとの電話に聞き耳を立てるのはもちろん、タイミングを合わせて一緒にトイレに行ったり、帰宅の方向が違う場合でも、偶然を装って同じ電車に乗ってみたり…さまざまな方法で彼らと会話する機会を増やし、いろいろな話を聞かせてもらいました。

なぜこんなことをしたのかというと、営業力を身に付けたいなら、トップセールスマンたちが、何を考え、何をしているかを知ることが一番の近道だと思ったからです。しかも、トップを張る人というのは、本音や手の内を明かすことは、まずありません。それならば、できるだけ近くにいて、自分の目で耳で確かめるしかないでしょう。

そして、もう一つ心掛けていたのは、お客さまに対して嘘をつかないということ。たとえば、若者に不人気な業種の経営者に「求人広告を出せば新卒生を採用できるか?」と聞かれた場合、私は正直に「難しい」と答えていました。というのも、その場限りで良いことを言って売上を作っても、実際に効果がなければ信用も失い、2度と利用していただけなくなるからです。だからこそ私は、「効果は保証できないけれど、誰よりも時間をかけて、真剣にベストな方法を考え、サポートしていくことは保証します」と話し、有言実行することで信頼と売上を勝ち得てきたのです。この姿勢は今でも変わっていません。

こうして、たとえ商材が変わっても必ず売れると自負できるだけの営業力を身に付け、次なる学びを求めてリクルートを巣立ちました。

私が、営業の次に学びたかったのは「集客」です。いかに営業力に自信があっても、ニーズがあるかどうかもわからない先へ、むやみに飛び込むのは非効率。何を扱うにせよ、まずは、お客さまを開拓する手法を確立しておく必要があると考えたのです。そこで、当時急成長しつつあったWEBに着目。まずはホームページを作り、その訪問客に対して営業をかける戦略を取ろうと考え、WEB集客を学び始めました。

そこで迷ったのが、SEOとリスティングのどちらに注力すべきかということ。いろいろと調べていくうちに、最も利用されている検索サイトGoogleの売上の97%がリスティング広告で成り立っているという記事を目にしたのです。

Googleの業績がさらに伸びていくということは、当時、誰の目から見ても明白でした。となると、連動してリスティングはますます進化し、よりユーザーから求められる広告になるのではないか。そして、新しい技術が次々と開発され、「運用」はより難しく、複雑になっていくはず…。ビジネスチャンスを感じた私は、リスティングを選択。早々にリスティング会社へ転職しました。

ところが、実際に働いてみると、朝から晩まで電話営業の日々。広告を「運用」する時間はかなり限られています。しかも、同業他社の状況も大差ない様子でした。そこで思ったのです。「世の中のリスティング会社が営業時間の多くをテレアポに費やしているのなら、私は朝から晩まで広告運用に専念する会社を作ろうじゃないか」と。

広告は効果が命。「自社の売り込みに懸命な会社」と「効果を出すのに懸命な会社」、どちらにニーズがあるのかは明らかです。

こうして2011年12月、27歳の時に、「運用」主体のリスティング広告会社、現在の株式会社リンクルの設立に至りました。

リスティング広告とは、ユーザーがGoogleなどの検索画面でキーワードを検索した際、その検索結果に連動して広告を表示し、自社ページに誘導するというものです。

当社の競合にあたるリスティングの代理店は、日本に約7000社あります。そんな中で、当社が掲げる強みは「ウェブマーケティングをワンストップで提供できる」こと。

たとえば、リスティング、ウェブ解析、ホームページ制作を別々の会社に委託するとなると、お客さまの手間は増えます。そこで、これらをワンストップで提供することにより、PDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルの高速回転を実現。ページ修正や解析をスピーディーに行うことで、広告効果を飛躍的に高める結果となっています。

また、当社はテレアポなどの無作為な営業ではなく、ホームページ制作会社、コンサル会社などとパートナー契約を進めています。各社のお客さまにウェブ広告をセットで提案してもらい、依頼があった案件に対して、運用を手掛けていくという仕組みです。

当社が創業以来、3年連続でGoogleからExcellent Performer Award(リスティング広告代理店全社中、優秀な成績をおさめたトップ10のみに贈られる賞)を受賞しているのも、こうした差別化の賜物でしょう。

ところで、営業力を身に付けた私が、テレアポに頼らない会社を作ったのはなぜだと思いますか? それは、自分が動かなくても、誰が売っても、安定的に売れるツールや仕組みを作ることこそが営業の極み、本質だと気付いたからです。

私が動いて、売上の半分以上を担っているようでは、会社の規模は大きくなりません。売り込まなくてもお客さまが自動的に買ってくれるようなツール、自分たちの代わりに営業をかけてくれるパートナーとの連携、誰にでも売れる仕組みをコントロールできる体制があってこそ、業績は飛躍的に伸び、規模も拡大していけるのです。

そして、こうした体制づくりには、斬新なアイデアを意欲的に形にしていける人材も欠かせません。

そこで当社では、「新卒主導」を掲げ、若い力を積極的に登用する制度を設けています。「flag制度」もその一つ。全メンバーに参加権があるビジネスコンテストで、事業計画書の内容が認められれば、会社出資によってグループ会社を立ち上げられるというものです。

また、「5年以内に10人の起業家を輩出する」ことを目標に、1000万円までの投資を行う起業家支援制度もあります。2014年には、第一弾企業として株式会社リンクルエース(代表 佐藤心也)が生まれ、初年度売上5億円を達成しました。こうした思い切った取り組みを即実行に移せるのも、ベンチャー企業である当社の強みといえるでしょう。

私は、自社を盛り立てたいという気持ちもさることながら、自分と同じように夢のある若者を全力で応援したいという思いも強く持っています。「ウェブ集客力」と「営業力」という2つのビジネスの要を当社で学び、それらを生かして夢を叶えてほしいのです。

どんな夢でもいい。志と情熱を持って働けば、必ずチャンスはやってきます。そして、そのチャンスを逃さず捉えることができれば、夢は叶います。そうやって頑張る若者から、私も新しいことを学び、ずっと成長し続けていたい。それが私の今の夢です。

(※書籍「自分らしくはたらく 個を生かすベンチャーという選択」から掲載)